人生は一度だけ

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東海道五十三次徒歩の旅 4日目①(小田原の夜)

10月15日
 
話は前日の夜、健康ランドに入ったところに遡る。
 
ここは宿泊ができるのだが、深夜料金の適用は午前3時になっていた。つまり、午前3時までに出れば追加料金を払わなくても良いということだ。
 
とはいえ、小田原までの工程ですっかり疲弊しきっていたぼくは追加料金を払って朝まで休むつもりでいた。
 
まず風呂に入り、足に入念に冷水シャワーを当ててアイシングしてから入浴。とにかく疲れていたので大浴場の広い湯船がありがたかった。
 
風呂から出た後は、休憩所で充電用のコンセントが使えたので、尽きかけていたiPhoneとモバイルバッテリーを充電しながら翌日のルートや宿泊地を調べる。
 
足に痛みが出てきているので、できれば翌日は距離を少なくして休めたかったし、今日に箱根湯本まで行けていたならばまだしも、小田原から箱根を抜けて三島までを1日はさすがに無理があると思い、箱根は2日かけて進むつもりだった。
 
そこで中間地点にある芦ノ湖近辺の宿を探したのだが、安い宿はもうなくなってしまい高い宿しか残っていなかった。
 
箱根湯本では近すぎて意味が無いし、明日は雨が降るという天気予報もあったので、最終的にはネットに載ってない宿もあると期待、最悪高くついてもしょうがないとして、芦ノ湖まで行ってから探すことにした。
 
充電が終わったので仮眠室へ向かう。まだ誰も来ておらず、壁際の良い場所を取れた。
 
時刻は22時を回ったところで、いつもならまだ起きている時間だったが、疲労のためか横になるとすぐ眠りについた。
 
 
 
突然だが、ぼくはカプセルホテルや健康ランドなど、完全な個室でない宿泊施設でないところで寝ようとする場合に起こるとあるジンクスを持っている。
 
それは「ちょっと尋常じゃない人達と出会ってしまい眠れない」というもの。
少しくらいのイビキなら全く気にしない方なのだが、その程度の耐性ではどうしようもないような強者と出会ってしまうのだ。
 
過去には、
・恐竜の唸り声のようなイビキが広間中に響き渡る「ダイナソーおじいさん」
・エンジンのギアが徐々に上がっていくようなイビキを立てる「エグゾーストおじさん」
・何度消されてもテレビの音を最大にする「テレビ爺」
・ネットカフェで独り言を言いながら定期的にキーボードを激しく叩く「キーボードクラッシャー
 
などなど、凄まじいモンスターたちに出会ってはノックアウトされてきた。(要は眠れなかった)。
 
 
何が言いたいかというと。
 
つまり、今回も出会ってしまった。
 
 
24時を過ぎた頃だろうか。
「ゴン!」という音で目が覚めた。
 
???
 
となったが、まだ半覚醒だったのでまた目を瞑り、眠りに落ちる。
 
少しして、また、「ゴン!」という音が鳴った。続けて「痛い」という声も聞こえたような気がした。
 
酔っ払って壁によろけた人でもいるのだろうかと思い、無視して寝ようとした。
 
もう一度、「ゴン!」という音がした。
 
さすがに今度は目を覚まして確認した。無人の仮眠マットを2つ挟んで、そこには明らかに身長190センチ以上はある巨漢がいた。
 
寝ているようなのでじっと見ていたら、彼は寝返りをうち、その際に頭を脳天側にある壁にぶつけた。
 
「ゴン!」という音が響く。
目を閉じたまま巨漢はやや不明瞭な声で「痛ぁい」と呟いた。
 
……こいつ、寝たまま頭をぶつけてやがる!
 
ぼくは驚愕した。世の中には寝ながら頭を何度もぶつけ、しかも寝たままでいられる人間、いや、モンスター「頭突きジャイアント」がいるのだ。
 
恐ろしくなったし、そもそもうるさくて眠れないので、隣にあるもう一つの仮眠室に退避したが、どうも心が昂ぶってしまったせいか、最初のように落ち着いて眠れない。
 
 
 
行くか。
 
ぼくの中に一つの想念がよぎった。
 
そうだな、行ってしまうか。
 
幸い風呂に入って少し眠ったせいか、足の疲れは少しやわらいでいた。
 
よし、行こう。明日雨かもしれないし、やってしまおう。
 
今にして思えば、寝不足のテンションもあったかもしれない。しかしとにかくそう決意したぼくは、iPhoneのアラームを2時に設定し、今は1時前だったので、もう少しだけ仮眠を取った。
 
その後、アラームが鳴る前に隣の部屋からした「ゴン!」という音で目が覚めた。
 
その時の自分の顔はわからないが、たぶんなんとも言えない表情をしていたと思う。
 
ともあれ起きて着替え、トイレを済まし、念入りにテーピングを施す。フロントで会計を済ませた時にはもう2時50分だった。
 
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当たり前だが外は暗闇。
 
長い長い1日が始まろうとしていた。
 
 
前置きが長くなりすぎたので、徒歩行については次の記事に書きます。