東海道五十三次徒歩の旅 17日目(関〜坂下〜土山〜水口)
10月28日
7:00
起床、8時には出るつもりだったが、旅の話で盛り上がってしまい少し遅くなる。
8:30
出発。
石垣屋のご主人に外まで見送っていただいた。暖かく居心地の良い宿でした。何泊もしていくという人の気持ちもわかるなぁ。
9:30
関宿を越えるとだんだんと山の中へ。
しばらく行くと坂下宿の手前にある公民館の横に、東海道五十三次の宿の名前が並ぶ柱が立っていた。
これをここまで歩いてきたんだなぁ…と感慨にふけっていると、突然尿意に襲われる。公民館でトイレを借りて出たら、入り口に杖が置いてあった。
地域住民のご厚意によるものらしい。せっかくなのでこれも借りていこう。
それからほどなくして坂下宿に入った。
関宿に比べると宿場町の面影はあまり感じられない。マムシ注意の看板があってびびった。
勘弁してください
10:20
写真だとわかりづらいけどすごい急坂
先ほどのマムシ注意の看板も思い出してしばし立ち往生していると、車に乗ったおばあさんがにこやかに話しかけてきた。
おばあさんは75歳。71歳で旦那さんを亡くして、それから時折一人旅に出ているんだとか。
いまは東京方面へ宿と車中泊を使い分けて向かっており、昨日はちょうどぼくの今日の目的地である水口のあたりに泊まったそうだ。
歩いて東京から来たと言うとたいそう驚いて、
『私はもう足と心臓が悪くて、本当はいろいろ歩いて回ってみたいんだけどねぇ…』
と少し寂しげにおばあさんは笑い、何も役に立てないけど、とチョコレートと栄養ドリンクを渡してくれた。
そうだ、ぼくにはここまで歩いてこられた健康な身体があるんだ。ちょっと急な坂くらいでなんだ。
決意したぼくは別れの挨拶を交わした後、坂に入っていった。おばあさんは姿が見えなくなるまで見送ってくれた。
ひたすら登ったり降りたり。ちょっと道が狭すぎるし倒木で道が遮られていて跨いで渡ったりもしなければならない。ガチ登山だ。
思わず写真も斜めに
足を滑らせたら終わりなので慎重に歩く。しばらくすると車道に出た。
が、もちろんこれで終わりではなく、ほんの少し進むとふたたび東海自然歩道への入口が。
またか…とうんざりしたが、ここからはこの先にある片山神社への道にもなっているからか、登りはきついが広く進みやすい道だった。
さっきまでの道はなんだったんだ。
11:00
「鈴鹿峠」と書かれた看板があったので、到着した!…と思ったら違ってて、まだ先があった。こういうのは紛らわしいし疲れるのでやめてほしい。
11:20
今度こそ鈴鹿峠到着!
道はきつかったが、標高はそれほど高くないせいか長さはあまりなく思ったよりも早く着いた。
近くにあった万人講常夜灯の前で杖を返却。けっこう危ない道も多かったので、借りておいて本当に良かった。
ありがとう
そこからしばらくは旧道が無いため、国道1号線を進む。
11:45
山の中、特に建物などは無くただ道が続く。
腰を下ろせそうな場所があったので休憩を取り、おばあさんからもらったチョコレートを食べる。
目の前には青空とすすきが広がっていた。
このあたりは山中という地名らしい。そのまんまだ。
12:45
ようやく人里に出た。ちょうどあった道の駅「あいの土山」で昼食を取ることにする。
昨日スーパーで買ったサラダ巻きと、ここの食堂で注文した唐揚げを食べる。
そういえば、石垣屋のご主人から鈴鹿峠で景色が良いところがある、と教わってて、そこで昼を食べようと思っていたのだったが、結局どこなのか見つけられなかったなぁ。
あいの土山の「あい」についての解説
13:15
出発、水口まではあと半分ほどか。
おばあさんにもらった栄養ドリンクを飲んで気合いを入れる。
道の駅の脇から旧道を通って土山宿に入る。このあたりから風が強くなってきた。
30分ほどで土山宿を抜けて国道1号線へ戻る。と思えばまた旧道へ。この出入りの繰り返しにもそろそろ慣れてきて、なんとも思わなくなった。
その後は特に何事もなく歩き続ける。途中、どこからかお茶を蒸す良い香りがした。工場でもあったのかな。
15:20
水口に入ったが、市街まではまだけっこうある。寒さのせいかやたらにトイレに行きたくなるが、何も見当たらない。
もう限界!というところで間一髪ローソンが見つかった。助かった。
こういうとき、江戸時代の人たちはどうしてたのかな。やっぱりその辺でしてたのだろうか。
風が強いうえに日も隠れだしたのでとにかく寒い。たまりかねてレインウエアを着ると寒さはピタっと収まり、逆に動いていると暑いくらいになった。ゴアテックスは凄いなぁ。
16:00
普段は日避けで帽子をかぶっているのだが、陽射しが収まったので先ほど着替えた時に帽子を脱いでリュックに紐で縛り付けていた。
風が強いのでひょっとしてと思い、ふと手で探ってみると、あるはずの場所に無い。
しまった。
最悪、陽射しを我慢すればいいので無くしても致命的ではないが、ここまで旅の苦楽を共にしていたモノが無くなってしまうのは正直辛かった。
取りに戻るのも考えたが、どこで無くしたかもわからないし、体力的にも戻るのはキツイ。
泣く泣く諦めて進み出そうとした時に、念のためリュックを降ろして確認したら、あった。
ギリギリの状態でリュックの変な場所にひっついていた。
こいつぅ心配させやがって、と変なドラマみたいな台詞を脳内で発し、今度は無くさないようにリュックの中に入れた。
17:10
水口市街に到着。
なんでこんな写真を撮ってるんだろう
そろそろ陽が落ちるので、今日の宿を探さなければいけない。
食事をして一息入れた後、iPhoneを使ってホテルを検索してみるが、一件も空いているところが見つからなかった。
岡崎でもそうだったのだが、平日なのにホテルが全て取られているのはなんなのだろう。何かのツアーやイベントとぶつかっているのだろうか?
仕方がないので近くにあるネットカフェでの宿泊を決め、店を出て歩いていたところ、ネットカフェの向こうに健康ランドっぽい建物があった。
ちょっと怪しい雰囲気だったので躊躇したが、ネットで調べてみたところ、公式サイトはないものの口コミでの評判は悪くない。
思い切って入ってみることにした。
結果的には、ちょっと施設は古いもののとても快適に過ごすことができ、しかもこの日は幸運にも利用料が半額の日だったので、非常に良い判断だった。
何事もやってみなければわからないものですね。
日本シリーズを見たりしてのんびりと過ごし、23時には就寝した。